杯の伝説

昔、ドイツのあるところに有力な貴族の娘さんで、クニグンデという女性がいました。
娘さんは、いつしか、若い頑張り屋の青年と恋に落ち、結婚を約束しました。
その青年は、金物の細工をする貧しい職人でした。
でも、貴族のお父さんは、娘の結婚に賛成するどころか腹を立て、青年を深い地下の牢屋に閉じ込めてしまいました。
やがて、悲しみと青年への募る思いのために、娘さんは、病気になってしまいました。
さすがに、不憫に思った父親は、こう娘に言いました。
「もし、おまえの愛する青年が、二人で同時にワインを飲むことができる台付きの杯を作ることができたなら、二人の結婚を認めよう」と。
愛の力は、まことに強いもので、器用な彼は、数日後、女性のスカートの形をしたすばらしい台付きの杯を作り上げたのです。
それが、この杯です。
杯の上の部分は、愛する娘さんの指に似せて形作り、その指が杯を持っています。
この杯で、愛する二人は、同時にワインを飲み干し、めでたく結ばれることができました。
以降、ドイツでは、この杯を多くの愛し合う者たちの象徴として、「婚姻の杯」と呼ばれ今日まで伝えられています。

1979年8月17日。蕨市民が初めてドイツのリンデン市を訪れた際に、今後の末永い市民交流を願い、この「婚姻の杯」で友好の乾杯を行うとともに、杯が蕨市民へ贈られました。
なお、女性のスカートに見立てた部分が大きな杯で、手に持って掲げている小さな杯がクルクル回るようになっていますので、二人同時にワインを飲むことができます。