タンゴ雑感



           [バイレ デ タンゴの事]


    このサークルが出来た当時は、日本のタンゴダンスも流行始めで、混沌としており、東京中(日本中)のサークルでステージダンスとサロンダンスの区別がつかないまま、ごった煮状態で踊られていました。

    それから20年以上が経ち、ドロドロだったタンゴダンスも段々上澄みと淀みに分かれて来ました。すなわちステージダンスとサロンダンスです。

    この傾向は今後益々特化して来るでしょう。社交ダンスがパーティーダンスと競技ダンスに2分したように、タンゴも見世物としてのステージダンスとパーティーで踊るサロンダンスに2分化して来るでしょう。

     このサークルは最初からサロンダンスを目指して、打ち合わせでしか踊れないステップは排除して来ましたが、今はハッキリ、サロンダンスに特化して教えています。












        [アルゼンチンタンゴダンスの在り方]

    

   最近ユーチューブでアルゼンチンタンゴを良く見ているのだが、今の特に若い先生は可哀想だなと思う。もうステップは踊り尽くされていて、そのステップを如何に自分流にアレンジするかに四苦八苦して、結果1番大事な筈のアブラッソは何処かに吹っ飛んでしまった。
   
    無理も無い。基本の動きはたった3種類しかない。全てはこれの組み合わせだ。ミロンガで踊るだけならそれだけで十分だ。だが競技会となるとそうはいかない。勝つ為に新しいステップを考え、色々なダンスの要素を取り込み、自分だけのダンスを作らねばならない。

   以前私が指摘した、柔道がジュードーになったように、アルゼンチンタンゴも競技会を始めた途端、アルゼンチンともコンチネンタルともつかない、ハイブリッド進化と言えば聞こえはいいが、早い話が雑種、要するにタンゴという新分野の踊りであって、アルゼンチンタンゴでは無くなっている。アルゼンチン人が「自分達のミロンガで踊るな」と言うのが良く判る。




  最近パーティーダンスがサロンスタイルからミロンゲーロスタイルに戻りつつあるという話を聞いた。流石タンゴの力!タンゴダンスは単なる娯楽ではない。競技会のように勝ち負けを競うものでもない。タンゴは癒し。タンゴはセラピーなのだ。それが判っているから、アルゼンチン人は頑なにミロンガを分けてでも自分達のタンゴを守ろうとしている。そして世界中のタンゴファンがそれに気付き始めている。気付かないのはタンゴを音楽の1分野、踊りの1種としか捉えていない、プロ・アマの音楽家やダンサー達だ。

  




  最近思うのだが、一口にタンゴと言っているけれど、実は踊りには音楽のリズムの違いによって、「ミロンガ」「カンジェンゲ」「タンゴワルツ」そして「タンゴ」と4種類の踊りがあります。これは古い新しいという事よりも、リズムの違いです。

   私は社交ダンスの教師でもあるので、社交ダンスで言うと、音楽を聴くだけの人達は10把1絡げにダンス音楽で片付けるが、踊る人達はそのリズムの違いによって「ブルース」「ワルツ」「タンゴ」「クイックステップ」「スローフォックストロット」「ウィンナワルツ」「キューバンルンバ」「チャチャチャ」「サンバ」「パソドブレ」「ジャイブ」と様々な踊りに分けて踊っています。

   それはイギリスのダンス教師達がボールルームダンスを世界に広めようと研究し、整理し、教科書を作ってから布教した為そうなったのだが。

   それとは違い、アルゼンチンタンゴは自然発生的に世界に広まってしまったので、踊りの区別もされていないし教科書もないと言った具合で、まあこれはアングロサクソンとラテンという民族の違いという事もあるのだろうが、元々世界に広めよう等とは思わず、自分達の趣味で踊っていたものが勝手に世界に流れ出て行ってしまったので、1番戸惑っているのはアルゼンチン人自身だろう。


   
     ついでに言わせて貰えば、もうタンゴはアルゼンチンのダンスではなく世界のタンゴと言うべきなのかも。つまりはもうアルゼンチンタンゴダンスではなく、アメリカンタンゴの色合いが強い。
    社交ダンスでもカレン&マーカス・ヒルトンまでのイングリッシュスタイルが衰退し、ワールドスタイルといえば聞こえがいいが、アメリカンスタイルが世界を席巻している。ボールルームは100年以上に渡ってイングリッシュスタイルを守り続けたが、タンゴは僅か5年そこそこでアメリカにタンゴを渡してしまった。

   昔の諺、遊びにルールを作ってスポーツにするのがイギリス人。スポーツをビジネスに変えるのがアメリカ人。タンゴもアメリカに渡れば趣味ではなく単なる商売。

    しかし、パリから始まった「タンゴ アルヘンティーノ」がパリではなくブロードウェイで大成功を収めた途端世界中に広まった。

   今までアルゼンチンにとってタンゴは国の一大産業だった。何もしなくても向こうから大金がやって来た。今は違う。金もダンサーもバンドも皆アメリカに流れている。

  最近タンゴを習った人達は知らないだろうけれど「タンゴ アルヘンティーノ」にリフトなど無かった。今のタンゴは「よさこいソーラン」と同じ、現代流にアレンジした亜流タンゴです。私の知人が数年前にブエノスに行った時、観光客が踊るミロンガと地元民が踊るミロンガが分かれていて、せっかくブエノスまで行ったのに、地元のミロンゲーロ・ミロンゲーラとは踊れなかったそうです。結局観光客のヨーロッパ人としか踊れなかったと言っていました。

    タンゴは日本の盆踊りと同じ、文化なのです。それを理解していない輩がタンゴは進化したとアホな事を言っているのです。
   
   何が言いたいのか?本当のタンゴとは何か?社交ダンスとは何か?アルゼンチンタンゴも社交ダンスも他人に見せびらかすものではなく、2人が楽しければそれで良い。それが社交としてのダンス。ボールルームの基本はイングリッシュ、タンゴの基本はアルゼンチン。アメリカンではない。

    とはいえ本場アルゼンチンで本物のタンゴが踊れないとあっては、もはやDVDしかないんだろうか?